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鍼と気の認知科学(3)当研究プロジェクトの意義


今回の研究プロジェクトのテーマは、「名鍼医の直観と思考プロセスを認知心理学的に検証する」「臨床に役立つ直観と思考力の高め方」である。

欧米の認知心理学分野で知られる「NDM理論」と、日本鍼灸界の「北辰会方式」という鍼灸術理の組み合わせであるため、説明を聞いてもプロジェクトの目的や意図がよく分からないという人もいる。

それでも一つ確かなことは、このプロジェクトが成功することでNDM研究における大発見が期待できること。もちろん、北辰会ならびに日本鍼灸界全体に対しても、次世代の鍼灸師の育成という点で貢献することもできる。

また、今回のプロジェクトで発見が鍼灸以外の分野にも応用可能になるだろうということ。

たとえば、NDM理論の創始者のゲイリー・クライン博士は、「極限状態における人間の判断と意思決定の心理メカニズム」をテーマに、消防司令官を対象に調査を重ねてきた。

実際、彼の研究成果は、軍事、航空、医療、石油化学、IT、スポーツ、ビジネス、政治など、幅広い分野に応用されてきた。

実際、人間が何かの問題解決をしたり、新しい局面で創造性を発揮するとき、直観が働き、その心理メカニズムは、分野を問わず、ほぼ同じであることがわかってきた。

また、すでに判明していることとして、鍼一本であらゆる病気に対応する北辰会方式の考え方が、NDM理論と類似しているというより、酷似しているということだ(いいかえれば、認知心理学的にみて理にかなっている、といえる)。

たしかに、北辰会方式における四診(とくに腹診)、体表観察、打鍼、少数選穴などの技法は、他の鍼灸流派や団体などと比較して、独特でユニークであるといえる。

しかし、技法の北辰会方式のエッセンスが直観と弁証論治論理学であるとされる。

そこで、「臨床現場で鍼灸師がどのように直観と論理的思考を働かせているのか」「四診や体表観察で得られた膨大な情報をどのように処理して一点の経穴に焦点を絞るのか」と考察してみることの意義は大きいのではないだろうか。

直観研究をよく知らない人は、私に「どうやったら直観が高まるのですか?」といつも質問をしてくる。

直観を高めるためのメソッドも確立されつつある。直観を高めるための第一歩は、エキスパートや熟練者とよばれる人たちの直観や思考様式を学ぶことだ。

ここで、今一度、今回の研究プロジェクトの意義を確かめておきたい。

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