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中村俊輔選手の教え「リフレクションが察知力を高める」


先日、あるスポーツ関係の出版社にて、直観についてのインタビューを受けてきました。競技の種類や選手のレベルや年齢などを問わず、誰もが「試合でどうやって直観を働かすことができるのか」「どうやったら直観力が高まるのか」といったことは興味があることだと思います。

ここ一連、鍼の話ばかりが続きましたので、今日は息抜きをかねてサッカーのお話しをしたいと思います。私はかねてから、「自分の専門分野に閉じこもっていては新しいアイディアが閃かないですよ」と他人にアドバイスをしています。鍼灸師はもちろん、サッカーに興味がない人も、超一流プロ・サッカー選手から学べることがたくさんあると思います。つまり、自分とは全く関係がない分野に、思わぬ発想の思わぬヒントがあるのではないでしょうか。

私がわざわざ紹介するまでもなく、中村俊輔選手(現・J1ジュビロ磐田所属)といえば、日本を代表する名ミッドフィルダーです。実際最近でも、2006年のドイツ、2010年の南アフリカのワールドカップで日本代表選手として活躍されました。ボールを静止した状態からゴールを狙うフリーキックは精度が高く、もはや芸術の域に達していますね。

その中村選手が、2008年に著作『察知力』(幻冬舎)を上梓されています。2017年の時点で第16刷で大ベストセラーです。また、2009年にも『夢をかなえるサッカーノート』(文藝春秋)を出されています。こちらもベストセラーです。

私は最近、二冊の著作を拝読したのですが、まず思ったことは「中村選手は身をもって直観の仕組み(メカニズム)をよくわかっている。自分の体験から、わかりやすい言葉で説明できている」ということでした。

自分よりも体格や身体能力に恵まれている世界トップレベルの選手と戦うには、相手よりも先に動き出すこと。試合中、自分のチームが戦術を変えるとき、監督が考えていることを読むこと。ー中村選手は、こうした状況の変化を瞬時に判断して、正解を導き出す能力のことを「察知力」とよんでいます。

私のような直観学者からすれば、この定義はまさに的を得ています。「中村俊輔オフィシャルサイト」によれば、もしサッカー選手になっていなければ美容師になっていただろうとのことですが、むしろ超一流の認知科学者になっていたのではないでしょうか(笑)。

補足しておきますが、察知力とは直観が働きだすときの判断能力のことで、専門用語としてはセンスメイキングといいます。ここ最近の私のブログでも、この単語が連発されていますね。たとえば、難しい病気を治せる鍼灸師にしても、病気(「証」という)やツボ(経穴)の知識、手先の器用さもさることながら、すぐれた察知力をもっているといえます。

さらに、中村選手は察知力を高める方法は、自分だけの「サッカーノート」をつけることだとアドバイスされています。高校2年生のころ、コーチにすすめられてはじめたそうです。試合前に、試合のテーマ、何を意識してプレーするのかを書く。試合の後、試合の流れを思い出してみて、良かった点、悪かった点、気になった選手や出来事、課題や練習すべきことなどを何でも書いたといいます。

こうすることで、自分を客観視でき、反省したことを次の試合に活かせたいいます。つまり、練習、試合、ノート(反省)、練習、試合…というローテーション(循環)の繰り返しで、選手としてのスキルを上げていったというのです。また、怪我やスランプ(とくに2002年のワールドカップで日本代表に落選)で苦しむことがあったとはいえ、楽しい作業だったといいます。また、試合中に失敗しても、その原因がわかる。

こうした自分のパフォーマンスを思い出し、とくに何を考えて(意識して)いたのかをふり返る作業をリフレクション(省察、反省)といいます。

中村選手がサッカーノートを書くという作業はリフレクションそのもので、彼はサッカーノートが自分の察知力を高めてくれたといいます。さらに、こうした作業は他の分野にも応用でき、人生での目的達成にも利用できるといいます。

オススメの二冊でした。

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