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<特別編1> 藤本蓮風会長の教え「生命の本質を知らずして『真の直観』はわからない」


昨日(3月28日)は、奈良県奈良市にある藤本漢祥院を訪問した。

すでに紹介しているように、私は、鍼灸学術団体・北辰会が提唱する「北辰会方式」と、私の専門である「現場主義意思決定」理論から、達人の「直観とは何か」「どうすれば直観を高められるのか」を研究調査している。

今回、北辰会学術部のお計らいで、北辰会鍼灸の聖地ともいえる藤本漢祥院を訪問し、北辰会創始者の藤本蓮風会長にお会いすることができた。

蓮風会長は、齢七十代半ばとはいえ、現役の鍼医であられる。毎日、西洋医学が見放した難病に苦しむ患者さんが全国より同治療院の門を叩く。

本来ならば、そうした難病の患者さんを最優先にするべきなのだが、私も蓮風会長の鍼を受けさせていただいた。

その鍼の迫力と技術は筆舌しがたいもので、近年悩んでいた持病が一回のたった一本の鍼でかなり軽減した!(私の左かかと内側、くるぶしに一本だけ刺鍼)

治療後、蓮風会長は私との面談時間を割いてくださった。私は、プロジェクトの主旨と目的を、また稚拙ながらも自分の学問観をお伝えした。

心理学者、西洋医、現代認知科学者たちは「心」を定義できない。直観は心の働きである以上、心とは何か、人間とは何かを考えていかなくてはならない-と。

蓮風会長は、北辰会鍼灸は西洋医学と並ぶ「医学」であり、「科学」であることを強調された。

また、生命とは「体」「心」「魂」から成り立つものであり、三位一体の存在である。私たちはカルテや弁証問診(注:北辰会方式特有の問診方法のこと)から、その人の体、心、魂の状態まで診ることできる、という。

一本の鍼を打つことで、病を払うことができるだけでなく、その人の心や人生までも良い方へ変えることができると仰られた。

すると、蓮風会長は席を離れられ、『臓腑経絡学』(藤本蓮風監修 / アルテミシア)のP. 272-275「総合と総体」のページを読むように指示された。これこそが、本書のエッセンスであると仰られる。そして、同書を私に贈呈してくださった。

ちなみに、蓮風会長の『弁釈鍼道秘訣集』にも、直観について詳しく記されている。じつは、これは東京から大阪への行きの新幹線の中で読んでいたものだ(一夜漬けの勉強になってしまったが。。。)。

一時間ほどの面談は、この上なく濃密であった。

これは自慢話でもなく、私は英国オックスフォード大学で西洋医学史を学んだ。しかし、母校には大変に失礼だが、蓮風会長の生命論、医学論、直観論は、オックスフォードの講座とは比べ物にならないほどの開きがある。

いくら、オックスフォードの建学が1100年で、英語圏最古の大学とはいえ、鍼灸の聖典『黄帝内経』(注:中国最古の医学書)は紀元111年であり、東洋医学・鍼灸は2000年以上もの歴史がある。

藤本家は15代にも及ぶ鍼医の家系である。西洋の心理学は100年程度の歴史。私の現場主義意思決定理論は、たかが30年の歴史。大人と子供の差では済まされない歴史の違いである。

しかし、私の学問の挑戦に、蓮風会長は「北辰会学術部の若い者たちとやってみなさい」と背中を押してくださった。

この貴重な機会に感謝し、自分の学問を深め、蓮風会長、北辰会、鍼灸界、ゲイリー・クライン博士、NDM学会に恩返しをしたいと思う。

この場を借りて、藤本蓮風会長、藤本漢祥院の内弟子の先生方、北辰会学術部の先生方に感謝申し上げます。誠にありがとうございます。

おまけの写真。蓮風会長は乗馬を趣味とされ、大きな賞も受賞されている。

藤本漢祥院のホームページ:藤本漢祥院

藤本蓮風会長のブログ:『鍼狂人の独り言』

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