認知インタビュー(4)松田蓮山先生@松田蓮絲堂

松田先生は、鍼灸団体・北辰会の「エリートコース」をまさに歩いてきたような人物だ。
専門学校在学中から北辰会に所属し、卒業後、創始者である藤本蓮風会長の藤本漢祥院(奈良県奈良市)で3年間内弟子修行を行い、無事に卒業した。
北辰会の会員ならば、誰もが蓮風会長の内弟子になれるわけではない。厳しい選抜過程を経て、素質を認められたごく一部の者でしか内弟子になれない。
-しかも、修行はこの上なく厳しい。
また、かりに内弟子修行を修了できたとしても、その後の研鑽も問われる。
松田先生は、蓮風会長より薫陶を受け、「蓮」の一字を受けて「蓮山」という号を許されたという。
さらに、北辰会関東支部の定例会(勉強会)の講師を務められ、同会の会報誌『ほくと』の編集長でもあられる。
それだけ、蓮風会長ならびに北辰会が松田先生を信頼している証拠だといえるだろう。
今回、私は松田先生に内弟子時代の思い出話を伺った。そこから、達人がどのように弟子たちに彼独自の「感覚」を伝えているのかを探るためだ。
認知心理学的にいえば、「暗黙知(コツ)をどのように形式知(目に見える知識)に変えて教えるか」ということになる。
松田先生は、幼少のころから少林寺拳法の修行もされていることから(現在、正拳士五段)、鍼灸の修行プロセスが武道の修行に大変よく似ているという。
また、技術が上達するにつれて、診断の際に患者さんの状態の察知の仕方にも変化が起きてくるという。そのことも詳しく伺うことができた。
インタビューは、鍼灸臨床家の心構えから、北辰会における指導のあり方、教育論、人生論、さらには社会論にまで発展していった。
当初90分を予定していただインタビューも、終わるころにはなんと4時間近くになってしまっていた!それでも、松田先生は、嫌な顔一つせず、最後まで丁寧に快く対応して下さった。
厳しい修行と日々の臨床体験からのお話は、ほんとうに説得力があり、北辰会の指導者の先生方は優れた臨床家だけでなく、教育家でもあると身をもって教わった。
実際、私が同治療院を去るとき、松田先生が玄関で、
「鍼灸師は患者さんの人生を、教育者は生徒さんの人生を預かるのですから、だから『先生』とよばれるのですよ」
とさりげなく仰られた。
私には、この言葉が非常に重く、印象深かった。このような貴重な機会を下さった松田先生、北辰会学術部の先生方に心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございます。
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